IgA腎症とは
成人の慢性糸球体腎炎で最も頻度が高いのがIgA腎症で、慢性腎炎の約40%を占めています。健康診断の時に、尿たんぱくや尿潜血陽性で発見されることがほとんどですが、上気道炎後に肉眼的な血尿を認め発見されることもあります。
症状のことが多く、尿異常をそのまま放置する方もいらっしゃいますが、IgA腎症の問題点は、治療が十分行われない場合には、その約20-30%の方が10-20年の経過で慢性的に腎不全に進行することです。腎生検では、メサンギウム細胞や基質の増加を呈し、この部分に免疫グロブリンのIgAが優位に沈着していることで診断されます。
IgA腎症の治療
IgA腎症の治療は、腎生検結果(組織障害度)、血圧、腎機能、尿たんぱく量をもとに判断し、薬物治療を開始します。抗血小板薬やARB(アンギオテンシン受容体拮抗薬、ACE(アンギオテンシン変換酵素)阻害薬、塩分制限などが治療の基本です。腎機能障害の程度に応じてたんぱく制限や運動制限なども行われます。
従来、IgA腎症は尿所見が改善しても、完全に治ることがまれな疾患でしたが、現在では、早期診断とARBやステロイドなどによる治療介入により完全に疾患が治癒する場合が増えてきています。また、ARBは単独で治療に用いられても、血圧を改善させ尿たんぱくを減少させるのみでなく、実際にIgA腎症の障害組織までをも修復することが我々の検討で明らかとなりました(Ohtake T et al: Hypertens Res 31: 387-394, 2008)
当科では、積極的にARBやステロイド(プレドニン)治療を行っています。3日間のステロイドパルス療法(点滴)+プレドニン20mg/日内服による治療プロトコルで約1年間のステロイド治療を行っています。
現在までのこのプロトコルによる治療成績は以下の通りです。現在までこのプロトコルにより24例の方の治療を行いました。その結果、血清クレアチニン値は下記の表に示すように、上昇はほとんど認めず、蛋白尿は治療により減少し、その後も減少したまま経過しています。また、この治療法ではステロイド使用量が少なめであるため、副作用はほとんど認めません。腎機能が悪化するかどうかを予測する因子としては、治療開始時の血清クレアチニン値が高値の場合、またステロイド治療開始1年後の蛋白尿が改善している場合には、完治も期待できます。血尿または蛋白尿がわかった時点でなるべく早く腎臓内科外来を受診することが重要と考えられます。
治療開始前 | 治療開始1年後 | 観察終了時 | |
血清クレアチニン(mg/dl) | 1.18±0.47 | 1.25±0.48 | 1.33±0.64 |
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1日尿蛋白(g/day) | 2.38±1.06 | 0.56±0.39 | 0.52±0.39 |
ステロイドパルス療法の詳細
5%ぶどう糖液500ml+メチルプレドニソロン1000mg+へパリン5000単位を1日目から3日間連日点滴します。1回あたり約3時間で点滴します。