腎臓に炎症が生じて、糸球体や尿細管・間質など重要な構造が障害・破壊されていく疾患です。
腎炎は、その発症の時間的経過から、急性腎炎症候群(或いは急性腎炎)(数日から数週以内に)、急速進行性腎炎(数週から数か月の経過で悪化してくるもの)、慢性腎炎症候群(或いは慢性腎炎)(おおむね1年以上の経過)に区別されます。また障害される部位により糸球体腎炎、間質性腎炎、(血管炎)に区別されます。
急性腎炎や急速進行性腎炎では蛋白尿(尿の泡立ち)、血尿(肉眼的あるいは顕微鏡的)、浮腫、高血圧、尿量減少、消化器症状(嘔気や嘔吐、食欲低下)、呼吸器症状(息切れなど)を認め、一般検査では蛋白尿、血尿、腎機能障害などを認めます。
慢性腎炎は、発症早期には自覚症状に乏しく、健診での尿異常や腎機能障害の指摘が唯一の発見契機となる患者さんがほとんどです(70-80%以上)。
慢性腎炎は、発症早期には自覚症状に乏しく、健診での尿異常や腎機能障害の指摘が唯一の発見契機となる患者さんがほとんどです(70-80%以上)。
異常の程度(蛋白尿や血尿の程度)は、必ずしも腎臓組織そのものの障害を反映しないことも当科の検討で明らかになっています。「尿異常が軽微であるから大丈夫」とは必ずしも言えず、やはり組織検査での評価が大切です。当科では積極的に腎生検を行い(年間70-90件)、患者さんの腎炎治療に役立てています。
また、腎疾患は、以前は治療をしても治癒することの少なかった疾患で、慢性に治療を必要とすることがほとんどでしたが、タイプや障害の程度によっては早期発見早期治療により、治癒が期待できるようになりました。
最も重要なことは早期発見のための健康診断での尿検査所見を活用して、早期に腎疾患を発見し治療に結びつけることです。健診での尿異常を指摘されたら、腎臓専門医の診断を受けることが大切です。
腎炎の種類
急性腎炎
- 急性糸球体腎炎
- 急生尿細管間質性腎炎
急速進行性腎炎
- ANCA関連腎炎
- 抗基底膜抗体腎炎
- 各種腎炎の比較的急速な増悪
慢性腎炎
- メサンギウム増殖性腎炎(IgA腎症、非IgA増殖性腎炎)
- 膜性腎症
- 膜性増殖性腎炎
- 巣状糸球体硬化症
- 微小変化型 など
日本人の慢性腎炎のなかで最も頻度の多いものは、メサンギウム増殖性腎炎です。メサンギウム領域の拡大と免疫グロブリンIgAがメサンギウム領域に沈着していることが特徴です。IgA腎症についての詳細は別項で治療法と共に紹介しています。
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ほぼ正常の糸球体
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半月体形成性糸球体腎炎の糸球体