腎動脈の狭窄は、若年層では若年性高血圧の原因となり、また中年期以降では高血圧を呈する以外に腎機能低下をきたすことが問題です。
当院での過去3年間での腎動脈狭窄症78症例(98本)の検討では、高齢者の腎動脈狭窄がほとんどで、また蛋白尿や血尿がないにも関わらず腎機能低下がある患者さんが全体の70%を占めています。腎動脈は左右で2本ありますが、片側の狭窄の場合と両側の腎動脈の狭窄の場合の2通りあります。
腎動脈狭窄症では、腎血管性高血圧、体液過剰、腎機能低下などが認められます。狭窄した腎動脈が閉塞に至ると、その側の腎血流は途絶えますから1側の腎機能は廃絶しますので、大きな問題になります。腎動脈狭窄症は、高度狭窄をカテーテル治療により解除できれば、その後の腎臓機能の保持が期待できる疾患です。当院では循環器科医師の協力のもとに、腎動脈狭窄症のカテーテル治療を行っています。
腎動脈狭窄症は、医師がその疾患の可能性を念頭に精査して初めてわかる疾患です。専門でない医師や経験の浅い医師では見逃される可能性があります。当科では、すべての腎臓内科スタッフが同じレベルで、「見逃されやすい腎機能低下の原因」としての腎動脈狭窄症を積極的に診断できるように努めています。腎動脈狭窄症の多くは動脈硬化に伴うもので、この意味では、腎動脈狭窄症は診療パンフレットのC.血管疾患(全身性動脈硬化関連疾患)の範疇にも含まれます。
腎動脈狭窄のCT画像
両側腎動脈狭窄症
右腎動脈閉塞