CKD | 糸球体濾過値(GFR)(ml/min/1.73㎡) | 血清クレアチニン値(mg/dl) |
Stage 1 | 90以上 | – |
---|---|---|
Stage 2 | 60-90 | – |
Stage 3 | 30-60 | 1.5-3.0 |
Stage 4 | 15-30 | 3.0-6.0 |
Stage 5 | 15未満 | 6.0以上~透析 |
腎機能が高度に低下すると腎不全とよばれます。急性腎不全は、急激な腎機能の低下によって、腎不全症状や体液異常を呈します。原因によっては他の臓器の不全を合併し、多臓器不全の形で急性腎不全を呈することもあります。慢性の腎臓病(chronic kidney disease: CKD)は腎機能に応じて段階別に以下のように分けられています。
腎不全では、①食事管理、②降圧療法、③薬物療法、④アシドーシスの管理、⑤貧血の管理、⑥2次性副甲状腺機能亢進症の治療、⑦体重管理を含む生活管理が非常に大切です。
食事管理では、まず塩分の制限がもっとも大切です。塩分制限6-7g/日を行うことにより、腎臓への過剰な負担を減らすことができますし、塩分制限をしっかり行うことで尿蛋白を減少させることができます。腎臓は、体の中を常に一定のきれいな状態に保つための臓器ですから、腎機能が低下した状態では、塩分以外にも老廃物(蛋白質が代謝されたあとの産物)やカリウム、リン、過剰な水分などがたまってきます。よってこれらについても腎機能の程度に応じて制限が必要になってきます。
腎臓病の食事療法で注意したいことは、塩分他の食事内容を制限することでカロリー不足になりがちな点です。カロリー不足の状態では、生きていくために必要なエネルギーを体の中の脂肪分や蛋白質を燃やすことで作るようになります。そのために、カロリーが不足した状態では、どんどんやせていって栄養失調に傾きますから、糖分や脂分を上手に利用して十分カロリーを摂取することが大切です。
血圧管理は腎臓病の進行を遅らせるうえで最も大切なことの1つです。血圧を下げれば下げるほど腎機能悪化を遅らせることができることが明らかとなっています。無制限に下げるわけにはいきませんが、外来血圧で130/80mmHg未満、尿タンパクが1g/日以上ある人では125/75mmHg未満の血圧管理が推奨されています。現在では、降圧効果と腎保護効果の両方を併せ持つARB(アンギオテンシン受容体拮抗薬)やACE(アンギオテンシン変換酵素)阻害薬などが利用できますので、慢性腎臓病がある方の高血圧治療薬として上記薬剤が第一選択薬となっています。
その他、腎不全では血液が酸性に傾いたり(アシドーシス)、貧血が進行したり(腎性貧血)、腎臓が作るホルモンであるビタミンDが不足し副甲状腺ホルモン(iPTH: インタクトPTH)が大量に生成分泌される状態(副甲状腺機能亢進症)が認められます。これらを透析になる前の保存期腎不全の期間にしっかり管理することが必要で、重曹(アシドーシス改善)やビタミンD製剤(副甲状腺機能亢進症治療)、エリスロポイエチン製剤(腎性貧血の治療)などが必要に応じて使用されます。貧血はヘモグロビン濃度で10-12g/dl程度を維持できるように管理します。
体重管理も非常に大切です。腎臓は、本来、体の状態を一定に保つ働きを持っていますから、短期間で体重がふえたり減ったりした時には、腎臓に大きなトラブルが生じている可能性があります。いつも一定の体重であるかどうか、毎日体重測定をして安定した体重かどうかをチェックするとよいでしょう。
保存期の腎不全管理については、私たちの施設スタッフ(腎臓内科小林修三・大竹剛靖、糖尿病内分泌内科浜野久美子)で小林修三監修による「腎臓病を進めないために」という60ページの冊子にまとめて作成していますから、お読みになられるといいでしょう。
急性腎不全では、腎不全の程度が高度な場合には、血液透析(hemodialysis: HD)を行う必要があります。他の臓器不全を合併し血圧などのバイタルサインが不安定な場合には、持続血液透析濾過療法(chronic hemodiafiltration: CHDF)を行うこともあります。これら血液浄化の管理は全身管理とともに当科で行っています。
慢性腎不全で、長期的に透析療法を維持していく場合には、血液透析あるいは腹膜透析(peritoneal dialysis: PD)のどちらかを選択します。2つの治療法の選択は医師ともよく検討したうえで、患者さんのライフスタイルなどを考慮のうえいずれかを選択します。当科ではPD療法の有用性を踏まえて、PD療法を積極的に勧めています(2010年6月で55名の維持PD患者さんがいます)。HDとPDに関する詳細は別に記載しますが、腹膜透析の導入法も当科で新たに作成し、推進してきたSPIED法(短期間でPDに関する勉強、導入を行う方法)を用いて行っています。PD診療は専門ナースが中心になり、栄養科、リハビリテーション科、ならびに医師が一体となって、チームでのPD医療を進めています。